蕪屋地酒情報

ノスタルジーと未来への希望

2006年に廃業し2019年に復活した佐賀の「光栄菊」。

その「光栄菊」さんのアナスタシアグリーンです。

「アナスタシア」はギリシャ語で“復活した女性”の意味を持つ固有名詞で、「アナスタシアグリーン」は菊の品種名にもあるということでまさにこのお酒の名前にぴったりだと言えます。

佐賀県産の「さがの華」を使用した無濾過生原酒で度数13度という低アル仕様です。その味わいは佐賀のお酒のイメージとは全く違うタイプの日本酒というイメージです。

「新政」のような溌剌とした酸がまず第一にきて、後から青みのある果実のような爽やかな甘味、余韻中に最後にほんのり感じる乳酸感。すごく今どきな「現在進行形」の日本酒です。

復活させたのはこれまでこの蔵とはもちろん、酒造りとは無縁の仕事をされていた有志の方々。各地の酒蔵で修業をして縁があって、かの地での酒造りに。現在、新規での酒造免許を取得するのは極めて難しいので休業・廃業した蔵を引き継いで酒造りを新たに始めるケースがあります。といっても引き継ぐのもそんなに簡単なことではないでしょう。条件や設備など様々な壁を乗り越えなくてはなりません。

日本酒全体を取り巻く環境はここ20年をみても激変しています。全体の生産量は半減する一方、本醸造を除く純米酒系の特定名称酒は倍増しています。そして販売単価も2割程度増加。高スペックな日本酒の輸出もいくつかの酒蔵さんの努力で大きく増加しています。

日本酒業界は今明らかに「量から質へ」転換しています。その変化の過程で酒蔵の数も減少し続けています。20年前には2000くらいあった酒蔵は現在では1400を下回っています。「高品質化・個性化」への対応、後継者問題等で廃業・休業する蔵が単純計算で1が月当たり3蔵近く出ていることになります。

そんな中でこう言った志のある方が蔵を再興するのは、本当に素晴らしことだなあと思います。何よりどういった新しい日本酒が出来上がってくるのか楽しみです。今回の「光栄菊」さんは、お酒の名前を前の蔵から引き継いで使用しています。もちろん新しい名前にすることもできたしそれも考えたようですが、「光栄菊」という名前を敢えて残すことにされたということです。それは昔から地元で飲まれてきたお酒の名前を大切にしたいという思いからだそうです。

13年ぶりに復活した「光栄菊」を地元の方が目にしたとき、思い起こされるのはかつて自分が飲んだ記憶か、子供の頃、家にあったそれを親や祖父母が飲んでいた思い出か。

そしてその新しい「光栄菊」の味わいは、間違いなく昔の「光栄菊」ではないはずだけれども、それはまた間違いなくこれから毎年進化を遂げていく地元の新しい希望であり、昔の「光栄菊」を知らなかった人たちにとっての新しい未来へつながるのだと思い、またたくさん飲んでしまういいお酒でした。

 

 

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