蕪屋地酒情報

ラピスからコスモスへ

何のことか分からないかもですが、秋田の日本酒「新政」のカラーシリーズ・「ラピス」が終売となり、これまでお店で主に扱ってきた「ラピス」も「コスモス」に変更となりました。

消費者側としては、バランスの取れた(コスパ的にも)「ラピス」が終売となるのはとても残念ではありますが、生産者側としてはもちろん意味のある事なのでしょう。

「ラピス」の酒米である“美山錦”が、あの久保田の上位酒でも使用され、新潟や日本海側で今も大切に使われる“たかね錦”をガンマ線照射による人口変異で誕生した品種であるのに対して、「コスモス」の“改良信交”も、同じ信交190号(たかね錦)の二次選抜(背の高さや芯白発現率のいい穂の選抜)により生まれた品種であり、親種である“たかね錦”に近く、より自然な過程で生まれた酒米であることの価値を蔵は重視されているのでしょう。遺伝子的には、ほぼ同じ“美山錦”と“改良信交”を使い、「コスモス」を上位酒として位置付けていたことからも、蔵としての酒米の扱いというものが見て取れます。何より、“改良信交”が秋田由来の酒米であるという事(“美山錦”は長野発祥)も「テロワール」という考え方の中では大きなウエイトを占めているとも思います。

とは言え、やはり個人的には美山錦と、6号酵母の生み出す酸の相性は素晴らしいのもだと思いますし、蔵もそう思うからこそ「美山錦」と「改良信交」を併用していたのだと勝手に思っています。「ラピス」の終売は、蔵のこれからの酒造りに対する強い意志(より自然に近い形で、自然や風土に寄り添った酒造り)を感じずにはいられません。今後も、「新政」からますます目が離せませんね。

そう、そしてこれからは「コスモス」を主に扱っていくことになるのですが、今季の「コスモス」も6号酵母(新政)らしい、キラキラとした旨味を伴った、そしてかすかな乳酸も感じる酸(果実的な甘酸っぱい酸ではない)が初めの印象で、美山錦とは違ってあたりの柔らかさも心地いいです。そして最初に感じる酸は杯を重ねても全く嫌味でなく、むしろどんどんキレと旨味が増していく印象です。

当たり前ですが、本当にお米と酵母の特徴を生かしていると驚かされます。

そして「ラピス」が終売になることにより「コスモス」の価格も引き下げられました。より「コスモス」(改良信交)を身近なものとしてくれています。ありがたいですね。

ぜひ、味わってみてください。

関連記事

TOP