蕪屋地酒情報

農口尚彦研究所 観音下(かながそ)

農口尚彦研究所から新商品がリリースされたので早速。

研究所?新商品?と思う方もおられるかもしれませんが、能登杜氏四天王にして、「日本の名工」にも選ばれた名杜氏・農口尚彦氏が自身の酒造りの集大成にして、後世にその技術を伝えるべく立ち上げた酒蔵が「農口尚彦研究所」であります。

今回出た新商品の名前は「観音下」と書いて、「かながそ」と言うそうです。普通では絶対に読めないですよね。

氏が酒造りをする場所としてたどり着いたのがこの石川県小松市の「観音下」という場所だったんですね。言われてみれば前からラベルに「石川県小松市観音下町」と書いてました。なんの疑問も持たずに「かんのんした」と頭で読んで終わっていました。

「研究所」のホームページで見ると、それはまさに日本人の心象風景というべき山里の景色がありました。ここで造られたお酒というイメージだけで3杯は多く呑めそうです。

瓶をよく見ると「2018年」という文字が。「ん?今年が初ヴィンテージのはずでは・・・」と思ったのですが、そう今年初出荷の新商品のヴィンテージが2018年の3年熟成酒という事です。

このお酒はホームページにもあるように、これまでの農口尚彦研究所のお酒の中で価格的にも最も安く「日常飲み」してもらいたいお酒という位置づけなのですが、それが3年熟成酒とは。

そのお味は、なんとも柔らかな口当たりで桃のような瑞々しい爽やかな甘みが最初に感じられ、徐々に乳酸感など多彩な酸の旨味とかすかな熟成感がじわじわと口の中で細く長く余韻のような形で続いていきます。この多角的な旨味と酸は、さすが「山廃の神様」のものです。

細くも長く続く骨のある複雑な旨味を全体としてまとめる醸造アルコール。そしてそれらを一体として調和する時間が低温3年。

なぜ醸造アルコールを添加したのか、なぜ3年熟成したのか。そんな軽薄な疑問はこの酒を一口飲めば、全て「なるほど」と納得させられてしまいます。(醸造アルコールの添加については全く悪い事ではありません。むしろ造り手の大きな技術であると思っています。むしろ今の「純米酒礼賛」の方がよくわかりません。)

初めからこの酒を造ることを設計して、3年熟成させたとしたのなら・・・僭越ながら「恐るべし農口尚彦」です。これが氏の「日常酒」。どれだけ日本酒のレベルを底上げしていくのですか・・・。

そうあの「菊姫」を全国で屈指の銘酒にした異次元の杜氏ですから。異次元の日常酒「観音下(かながそ)」です。「かながそ」「かながそ」、、、もうすでにその名前に日本酒としての魅力が宿っています。

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