蕪屋地酒情報

‟新聞紙の悪魔”再び

6月に入って「夏酒」が続々と登場していますが、当店にあの「新聞紙の悪魔」の夏蔵出しが再臨しました。

山形の寿虎屋酒造の「三百年の掟やぶり」の夏蔵出しです。

当店が扱う「三百年の掟やぶり」は本醸造の無濾過槽前生原酒です。「槽前(ふなまえ)」というのは、お酒を搾る際の「槽」の前で飲む酒、つまり搾りたてをすぐに飲む酒という意味だそうです。

そもそも「三百年の掟やぶり」という名前は、「蔵から出す酒は濾過をして度数調整をして火入れをする」という昔からの掟をやぶって出荷するお酒という意味です。昔は今のように温度管理ができる配送方法がない時代に、蔵として安定的な品質のお酒を届けるための大切な掟であったのだと思います。そんな昔には蔵人しか飲むことのできなかった「槽前酒」があまりに美味しいので出荷したのが、この「三百年の掟やぶり」ということです。

この「三百年の掟やぶり」は新酒と夏蔵出しの2回出荷があるのですが、フレッシュで軽くシュワっと感もある新酒に対して、夏蔵出しはやはりまろやかで全体の調和のとれた味わいです。

一口含むとまろやかでスーと流れる口当たり、山形のお酒らしい無濾過生原酒にしては甘すぎず濃すぎず全体としてとてもバランスが良く切れもいいので杯も進む「飲みやすくて旨味もある」と感じる。そうシンプルに味覚として「美味しい日本酒」なのです。

近年、「原酒」と言っても必ずしも度数が高いわけではなく低アルコールの原酒もありますが、この「掟やぶり」は19度という硬派な原酒です。この高アルコールを感じさせない無濾過生原酒の濃厚な旨味、そして山形のお酒らしい滑らかなキレ。すべてが高いレベルでバランスが取れている。

東北の蔵が作る高アルコールの無濾過原酒、、、ついついたくさん飲んでしまう。そう、それが「新聞紙の悪魔」と(当店が勝手に)呼ばれる所以であります。

美味しいのです。で、飲み飽きないのでついたくさん飲んでしまう。根っからの日本人DNAの私にとって19度という度数はボディーブローのように効いてきます。気付けば前後不覚・・・。まさに「悪魔」。でも懲りずにまた飲んでしまう。やっぱり「悪魔」。当店だけでもどれだけの人がこのお酒にやられたか・・・。

わかっているのに今年もまた飲んでしまう。そんな山形新聞に包まれた魅惑の酒に魅入られてください。

関連記事

TOP