蕪屋地酒情報

夏の夜の甘酸っぱい・・・

京都では3年ぶりとなる祇園祭の宵山と山鉾巡行が行われました。

3年ぶりということもあり、たくさんの人出があったようですね。祇園祭の宵山期間は祇園エリアはいつも静かなんですが今年はさすがにたくさんの方が祇園まで来られていました。

今週は後祭りですが、出店も出ないので落ち着いて祇園祭の雰囲気を感じていただけるのではないでしょうか。

そして後祭りも終われば京都の夏本番です!

当店も賀茂茄子をはじめとした上賀茂産の夏野菜や、鱧など夏の味覚をたくさんご用意しています!!

そして日本酒も、前回紹介した「三百年の掟やぶり」の夏蔵出しなど夏酒もいくつかご用意していますが、今回も夏酒を1つ取り上げます!

それは京都・京丹後の白杉酒造さんの「白木久」の夏酒「星降る夜のshirakiku」です。

白杉酒造さんのすごいところは、酒米をコシヒカリやササニシキなどの食用米しか使わないというこだわりの酒造りをしているところです。これは当代の蔵元杜氏である白杉悟さんが、蔵を継ぐにあたり地元に戻ってきたときに食べた地元産の御飯のおいしさに感動して「食べておいしいお米なら、おいしいお酒も造れるはず」と思われたからだそうです。以来、氏は地元産の食用米のみを使って酒造りをされています。

そしてこの「星降る夜のshirakiku」は地元・京丹後の契約農家さんの栽培したコシヒカリ100%で60%精米したお酒です。

食用米で日本酒を造るということがどういうことなのか(どれほど難しいのか)は、正直にいうとよくわかりません。現在の精米技術では、精米自体はさほど難しくないのかもしれませんし、個人的には現在の酒造りにおいてその味わいを決定付けるのは酵母ではないかと思っているので、もちろんお米は味わいの設計において重要な要素であるとはいえ、食用米であるから味が乗らないとか薄っぺらかったりするとは思わないのです。

ただ、たんぱく質の多さから来る吸水性の悪さや、特にコシヒカリなどの粘り強い食用米のさばきの悪さ、心白の大きさから来る菌のはぜ具合であったりは、造り手として好適米とは違った技術や注意が必要となるのではないかと思うとやはり、そのお酒の味わいというものがどこまでイメージしたものと違ってくるのか。またそれが、どう飲み手に伝わるのかというのはとても気になるところですね。「おいしい・・・けど、まあ食用米だから」と思われては、そのこだわりも残念なものになってしまいます。

まあ結論から言えば、そんな消費者の心配など全くいらないお酒なんです。

スペックは60%精米で、酵母は14・10号を使った純米の無濾過生原酒です。上立ちは青リンゴのようなさわやかで爽快な香り、その後でヨーグルトのような酸が感じられます。味わいは、ライチやマスカットをかじったような爽やかでほんのり甘くそして果実味あふれる酸味。後味は、香りの奥で感じたヨーグルトのような乳酸感がほんのりと余韻として残ります。

なんて素敵な夏酒。爽やかで甘酸っぱくも儚そうで消えることのない旨味・・・溢れるばかりの星がきらめく夏の夜空は夏の甘酸っぱい思い出そのものではありませんか。

地元の美味しいお米でお酒を造るという志の上に、こんな思いを巡らせてくれるお酒を造ってしまうなんて。

ひと夏の思い出にぜひ一杯いかがでしょうか。

 

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