蕪屋地酒情報

「春酒」に春を感じて

4月に入ると京都の桜も満開に。昨年も一昨年も新型コロナウィルスの緊急事態宣言での休業や自粛もあり、3年ぶりの賑やかな春となりました。そしてお店でも3年ぶりに「春酒」が入荷しています。

「春酒」といっても今となっては明確な定義があるわけではありません。今のように醸造技術が発達する前、それこそ明治期以前は「四季醸造」でそれぞれの季節に醸造することで、その時々の気候の影響を受けた酒がありそのなかでの「春酒」は今よりはしっかりとした定義があったと言えるのかもしれません。

しかし、現在は「四季醸造」ではなく「通年醸造」が可能となり醸造過程においても流通過程においてもしっかり温度管理ができるので、その季節に造られた、絞られたということに本質的な意味は薄くなっているのかもしれません。

では、今たくさんある「春酒」は何か。それは造り手の方の「春」のイメージ・思いそのものだと思っています。桜をイメージさせるような華やかな香りであったり、少し冷たい春風を思わせるふくよかでありながらシャープなキレのあるお酒であったり。

厳しい寒さが緩んで、暖かくなり桜が咲いて、散って、そんな桜を見上げて、ただ「きれい」と思うだけではなく、わくわくうきうきしたり、切なくなったり、そしてお酒が飲みたくなったり。

日本人の春に対する、とりわけ桜に対する思いは特別なものがあります。お花見で盃に桜の花びらを浮かべて・・・やったことのありそうでないそんな風情も感じれるわけです。造り手の春の「思い」を自分の気持ちに投影して、春の食材のお料理と春酒を味わえば、また一つ春の楽しみが増えるのではないでしょうか。

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