久しぶりの「花陽浴」です。八反錦の48%精米ですが、個人的には「花陽浴」と「八反錦」の組み合わせは、かなり秀逸だと思います。八反錦そのものは味わいがありながらもきれいな酒質になりやすいイメージですが、花陽浴ならではの甘さが引き出されると、まったりとした糖蜜感がまず最初に感じられ、そこからまさにマンゴーやリンゴのような「果実的」な香りが鼻から抜けて、最後にきれいに余韻だけを残して甘さが消えていく心地よさがあります。本来、ここまで甘いお酒であればともすればいつまでも口の中が甘ったるくなってしまったりするものですが、「キレがある」という感じではなく「フェードアウト」していく感じです。しかも「おりがらみ」ならではの華やかな風味も加わることで、とてもゴージャスな仕上がりになっています。
もちろん、山田錦はこれぞという旨味を湛えていますし、美山錦の酸と花陽浴の甘さの融合もいいし、雄町のメロン的な甘みとの相性もいいのですが、八反錦はなんだか貴腐ワインやアイスワインを彷彿とさせる日本酒です。すごいですね。改めてこんなお酒がお米から造られるなんて。
そしてこういうお酒は、どういう食べ物と合わせるのか迷います。もうチーズやドライフルーツでいいのではないかと思ってしまいますが、そこは和食のお店なので。変化を楽しむという意味では「もろきゅう」。胡瓜の青味に諸味味噌のアミノ酸と塩味の組み合わせは、またひと味違った花陽浴の甘さを感じてもらえるのではないでしょうか。少しクセのあるところだと「鮒寿司」、特にその周りにある米麹と合わせていただくのもいいと思います。